まだまだ続く荷造り

何故か、あれから全く片付いていないような気がする、というか、部屋の中はものすごい状態が、しばらく続いていた。

というのは、ふたつあるクロゼットの中には、引越しの経験がある人にはわかるはずだが、信じられないほどのモノが詰まっているようで、永遠に終わらないんじゃないだろうか・・・ひょっとしたら異次元の世界につながっているのではないだろうか、だってこんな物買った記憶もないし・・・と、ミックはため息をついてひと休みばかりしていたのである。

クロゼットや引き出し、タンスの中の物を、とりあえず少しずつ外へ出す仕事を続けている内に、狭い部屋の中はそれこそ、『足の踏み場もない』状態を超えるものすごいことになってしまっていた。

それらの物を運びつつダンボールに詰めていくのだが、散らかった中にちゃんと通り道でも作れば良いものを、モノをまたいだり足で押しのけたりしながら移動するので、今に絶対につまずくに違いない、とわかっているくせにそうしない、ズボラなミックである。

そうしているうちに、期待通りやっぱり見事にころんでしまった。それまでにも、すでに何度か小さくつまづいていたのだが、何事もなかったものだから、ミックはいい気になっていたらしい。胸と腕と膝の3ヶ所を、イヤってほど打ってしまい、しばらくそこに寝転んでいた。そして、やっぱりズボラなミックは、その痛みを理由に、本格的にカウチに寝転がると、本棚の奥から出てきたコミックを読み出すのである。

しかも、時期は悪い。ミックはオリンピックを観るのが大好きなのだ。競技は何であれ、7時になると、ミックはピタリと片付けを辞めてカウチと同化する。CMの合間に食べる物を取りに行き、トイレに行き、時折、『ああ・・・今日もあんまりはかどらなかった・・・』と部屋の中を見回して、その日百回目くらいのため息をついている。

それでも、少しずつは片付いていたらしく、いつの間にか床が見えるようになっていたのが、つい2日前。頑張って、ゴミを出したのが良かったのだ。アパートのゴミ用のコンテナは大きく、ふたつある。コンテナが空になっているのを、ちゃんと確かめてからゴミ出しをするくらいには賢かったので、ほとんどひとつと3分の1を、ミックひとりで使ってしまった。週末だったので、さすがに他の住人に気が引けて、少しの隙間を残してその日のゴミ出しは終わりにした。

今日の午後になって、知り合いの運送屋さんが、明日の朝引き取りに来てもいいか、と電話をよこしたので、ミックはあせった。荷造り用のダンボールその他を運んで来てくれたのは、2週間も前なのに、まだ出来ていないと聞きあきれられたに違いないが、3日後にしてもらった。

その間の部屋の様子を、是非写真に、と思ったのだが、カメラが見つからなかった・・